ポルトガル人の道8  6月29日(水) Tui - ポリーニョ

 Tuiのアルベルゲを7時27に出発する。やっぱりこのアルベルゲは大きな教会に併設されていて棟続きになっているようだ。その割にはミサの時間なんかどこにも貼り出されていなかったな。結局、教会には一度も足を運ばなかった。
 ここからの巡礼路が良く分かっていないので、他のペリグリノが出て行くのに合わせて出発してついて行くことにする。その誰もが今まで顔を合わせたことのないグループなので、みんなここTuiからスタートする人たちなのかも知れない。グループにくっついて歩いたので問題なくTuiの町を抜けられる。

 2時間半歩いた村の三叉路にバルがあったので寄って行くことにする。カフェコンレチェと肉入りのタパスで4ユーロ。高いか普通か良く分からないが肉入りなので適正価格なんだろう。このバルは巡礼路上に久しぶりに登場した店なので沢山の巡礼が寄って行く。駐車場に軍隊のトラックが停まっていて、歩きでやってくる兵士のグループが必ず寄って行くので行軍訓練のチェックポイントのようだ。トラックの横で一息ついて、5分位でまた出発して行く。男性兵士だけかと思ったら、女性兵士の一団もやって来た。チェックポイントでは飲み物の他に煙草も一服つけられるようだ。女性兵士もみんなザックにはマシンガンを背負っている。靴は兵隊らしからぬカラフルなスニーカーでイヤリングをしている人もいる。映画に登場する俳優の女性兵士のようで魅力的だ。日本の自衛隊では有り得ないだろうが、軍隊の訓練中でもオシャレを忘れない所はお国がらか。

 ここから巡礼路は二手に分かれるらしい。どっちにしようかと思っていたが直前に出発した人が山の方に行ったので私も山方面に行く坂を上って行く。どっちがいいのかさっぱり分からないが、人が多い方を選択した方が何かと身のためだ。

 ずっと歩いて、O Porino町の入口で、また軍隊のチェックポイントがあった。どうもカミーノが訓練のコースになっているようだ。カミーノなら黄色い矢印があるのでわざわざ行軍コースを設定する手間が省けるってことなのかも知れない。さすがスペイン、手抜きできるところは見逃さない(想像です)。兵隊はみんなバックパックの外にむき出しのマシンガンを背負っている。リュックの中にもいろいろ入っているらしいし、重たいんだろうな。

 ポリーニョの町に入った所でカミーノを見失う。タブレットを出してGPSでアルベルゲ方面を確認しながら歩いていると、フランシスカとターニャの相方が銀行に入って行くのが見えた。ターニャとはエストニアを一緒に出発したらしいが、二人は別行動なのでその関係が良く分からない。ターニャのスマホには別の女性の写真が待ち受けになっていて、彼女がベストフレンドだと言っていた。じゃぁ一緒に歩いている人は?と聞いたら言葉を濁していたので外国スペインへ行くための便宜的な相方だと推測した。

 アルベルゲはタブレットの地図に登録してあったのでほどなく見つかる。近くで私営アルベルゲの勧誘をしているおばちゃんが居たが、ムニシパル(公営)に行くんだと伝えたら、それじゃ仕方ないわねと言う感じですぐ諦めた。12時45アルベルゲ到着。先着していたのはトレド出身の若者だった。受付は3時からだが自分が電話で頼んだので1時に受け付けして貰えると恩着せがましく言っている。しかし思惑が外れて電話ではやっぱり3時受け付けと言われたらしい。隣の住宅がオスピタレロの家なので、名誉挽回とばかりに扉を開けて貰い交渉するも撃沈されていた。結局、受付は情報通り3時だった。あんちゃん健闘するも面目丸潰れ。

 スペイン婦人4人組もやってくるが、受付が3時と知って皆ランチをしに行くと出かけていってしまった。私はレストランやバルは高いので極力利用しないようにしているのでスーパーを見つけてサンドイッチ、生ハムにビール2本を買ってきてアルベルゲ隣のベンチで昼飯にする。これなら3.62ユーロと格安だが、バルやレストランなら安くても10ユーロは取られるだろう。スーパーにはプラスチックのバケツに野菜やパスタなどが入ったのを売っていたので、晩飯はあれにしよう。割と近くにスーパーがあったので、このアルベルゲは今のところここだけは合格だ。おばちゃん4人組は私営アルベルゲの勧誘にあって、そっちに決めたらしくチェックインしてこなかった。勧誘のおばちゃん良かったね。私営アルベルゲは公営より数ユーロ高いだけでサービスはぐっと良いから、ちょっとお金に余裕のある人には便利な宿だ。

 受け付け開始前に一人のおじさんペリグリノがやって来た。スペイン語は話さなくて英語なら通じる。前のアルベルゲで一緒だった専門学校生二人もやって来た。知り合いがやって来ると心が華やぐ。3時10分前になったら受付を開始してくれる。たった10分だがこう言うのはありがたい。今回も6ユーロ。ベッドは無指定で、好きなのを自由に選んでいい方式だ。時には上段・下段を無視したベッド番号を指定するアルベルゲもあるが、早く着いた意味がないので止めてもらいたい。

 先ほど近くの銀行に出入りしていたフランシスカ達はアルベルゲにやって来ないので、私営にでも行ったか、次の町に行ったかと思っていたが、時間になったら二人ともやって来た。ターニャの相方に、ターニャはレドンデラへ行ったと伝えたら、すでに知っていた。仲は特別良くないらしいが、やっぱりエストニアを一緒に出発した間柄なので、今日の行き先くらいは伝えていたようだ。同じアルベルゲになっても一緒にいないし、歩くときも別々だし、一体どういう関係なんだろう?この人はマツコ似のフランシスカと仲良くなっていつも一緒にいるようになった。二人とも強烈な個性同士なので気が合うのだろうか?

 エストニアの女性とは幾晩も一緒になって知らない仲ではないのだが、どうも私とは別の人種のような気がして名前を聞くこともしなかった。この子は背中一面にでっかいタトゥーを入れており、いつもタンクトップなのでタトゥーが自慢のようだ。

 昨日のTuiからスペインはガリシア州に入った。今日のポリーニョも勿論ガリシア州。ガリシアのアルベルゲの殆どは立派なキッチンはあっても鍋釜や食器は置かないので調理することも食器を使って食事することも出来ない、Wi-Fiもスマホ所有者だけしか利用できないロクデナシ。建て物だけは立派なんだが、こう言うのを仏像作って魂入れずと言うのだろうか。

 いま持っているスイスのナイフは昨年ブルゴスで買ったものだが、いかんせん刃が4cmほどしかないのでスイカを切る時に往生する。もう少し刃渡りの長いナイフが欲しいなぁ。それと、スプーンとフォークが一緒になったのが欲しい。どっかで手に入れたい。スプーンはプラスチックのちっこいのを持ち歩いててヨーグルトを食べるのに使っているが、スイカを食べるには役不足だ。

 5時過ぎに夕飯と明日の朝飯用の食料を買いだしに行く。昼間考えた通りプラスチックのバケツに生野菜、パスタやチーズなどが入ったのを買う。それと缶コーラにヨーグルト4、1リットルオレンジジュース、スープの素で6.45ユーロ。オレンジジュースはいつも100%なので体に良さそうだ。これを持ち歩いて2、3日掛けて飲み干す。最初はバルでオレンジジュースを飲んでいて、次にスーパーでオレンジを買った方が安く上がるのに気づき、最後は1リットルオレンジジュースに行きついて、これが一番安くて量がある。だんだん生活の知恵がついてくる。

 昨日のTuiで一緒になった日本人二人組がチェックインしてきた。フランス人の道を歩き終えてから、ここポルトガル人の道をTuiからポリーニョまでの一区間だけ歩いて明日は帰るそうだ。オスピタレロとの会話に苦労していた時に私が調度通りかかったのでスペイン語通訳を頼まれるが、ととととんでもございません。でも、明日のチェックアウトだけを知りたいそうなので、アケオラ、クローズ、マニアーニャと適当なスペイン語を言ったら通じて時間を教えてくれる。日本の方は「あー、クローズで良かったんだ」と言ってるがクローズは英語だ。私みたいに何でもいいから身振りを交えて言ってしまえば通じることもあるってことだ。
 もう一人の日本人Nさんはここにはやって来なかったので、ひとつ先の町まで行ったようだ。泊まる町がひとつずれると永遠に会えなくなることが多いが、イギリス人の道へ行くと言ってたので、またそこで会えるかな?

 アルベルゲの木製デッキの上で夕飯にする。ここは川の傍で日陰なので肌寒いほどだ。フランシスカとターニャの相方が近くでずっと英語でお喋りしている。この二人は気が合って、一昨日からずっとつるんでいる。ターニャはそこには入らない。英語が少ししか喋れないからか?でも、ターニャとエストニアの彼女が一緒に居るのを見たことないので何か特殊な間柄なのだけは確かなようだ。


ポルトガル人の道9へつづく